2008年2月29日金曜日

幹部だからこそメールを (NBonline「経営新世紀」

電子メールが普及する以前は、会社幹部とのコミュニケーションが大変だった。秘書経由だったから、時間が掛かるだけでなく、伝言は“間接話法”になる。伝 言を聞いた幹部が疑問点を秘書に確認しても、秘書は当事者ではないから答えられない。「君、そのくらいのことは確認しておきなさいよ」と言われる秘書もい い迷惑で気の毒だが、世の中の秘書には、いわゆる「虎の衣を借る狐」族が居るから、秘書のご機嫌で取次ぎのプライオリティを下げられたり、最悪の場合には 故意に忘れられたりする危険性まで存在した。ちょっと言い過ぎたかな? でも往時の秘書の顔を思い出して、強く頷いておられる方も多いことだろう。私にも 浮かぶ顔がある。
 それがいまや、社長にも直接メールが飛ばせる。パソコンへのメールを携帯電話に常時転送して、オフィスに居ないときにも直ちに返信するという、私のよう な会社幹部もいまや少なくない。新幹線車内も仕事場の延長で、常にパソコンに向かっているが、仕事の企画や執筆の途中でも携帯電話によるメールは常にオ ン。
 しかも、最近はNTTドコモのFOMAが結構繋がるようになったので、携帯メールだけではなく本格的なPCメールも新幹線車内で頼れる道具になってきて いる。だから、部下や仕事仲間との“直接話法”のコミュニケーションが途切れることは講演中や社外で重要な会議中という止むを得ない場合に限られる。
 直接話法と間接話法の差は単に時間や生産性の問題だけではない。PDCAという経営プロセスにおいて情報は全ての基礎だから、コミュニケーションの質は経営の質を左右する重大事である。
 私の交友範囲でアッという程スピーディに返信を頂ける方々を思い出すままアイウエオ順で列記してみると、石倉洋子・一橋大学ICS教授、伊藤元重・東大 教授、河原春郎・ケンウッド社長、黒川清・内閣特別顧問、小林栄三・伊藤忠社長、佐々木かをり・イー・ウーマン社長、鶴保征城・IPAソフトウェア・エン ジニアリング・センター所長、藤原洋・IRI所長、村上憲郎・グーグル社長、渡辺良機・東海バネ社長などなどだ。とにかく、話が早い。
 メールの重要性を認識して常にチェックをおろそかにしないということだろう。
 昔話はいくら時間が経っても価値が落ちないが、我々のビジネスの話は商材があって、それを支える技術があって、競争相手があって、受け容れる市場があっ て初めて商材の価値が決まる。だから商材の価値は日々移り変わる。鮮度が重要である。だからビジネスでスピードは命だ。
一方、いまだに自分ではメールをやらずに秘書や部下経由の社長さんたちとお付き合いをするのは、これは骨が折れる。ディナーにご招待したときなどのお礼状 を毛筆のお手紙で頂いてしまうと、さあ大変だ! 毛筆のお手紙にメールで返信というわけにはいかないではないか。ワードで文案を決めたあと、使い慣れない 万年筆で書き潰し、書き潰ししながら清書をする羽目になる。メールで頂いたお礼状には間髪を入れずに返信が出来るし、それにさらに返信が来て次の食事会が 決まり、ではAさんもお誘いしましょうかと話が発展する。この「手軽さが話の発展を産む」ことが重要なのだ。
 まだ始めておられない幹部のみなさん、幹部だからこそ話の大きな発展が期待出来るのです。メールを始めましょう。

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