2008年2月29日金曜日

膨大な書類データ入力にITの本領発揮 (NBonline「経営新世紀」 2007/09/29)

外国に安い労賃を求めて何でもかんでもアウトソーシングすることに、セキュリティ問題という歯止めが掛かってきている。アウトソーシングする内容によっては秘密厳守しなければならない個人情報の漏洩問題がネックとなっているようだ。
 たとえば、多くの企業や自治体などでは昔から紙媒体で保存されてきた膨大な量の個人情報がある。住民台帳やアンケート用紙、世論調査票、各種契約書類な どなどであり、中には手書き書類も数多くある。紙のままや手書き書類では検索や統計などに使えないので、これらをデジタルデーターに変換する必要があるの だが、書類を見ながらキーボードでコンピュータにインプットするのは膨大な作業であり、是非とも低賃金の作業者を使いたいのだが、個人情報がオペレータに 丸見えになるため種々の漏洩経路が発生することになる。
 このインプット作業を中国を中心に賃金の安い外国企業にアウトソーシングすることが一般的だが、文書データーをそのアウトソーサー企業に託さなければな らないので、外国側での情報漏洩を防ぐ手段が外国企業任せになってしまう。これでは日本企業側の責任が果たせないから確かに重大問題である。
 何も外国企業は安易に情報漏洩をすると差別発言をしているのではない。情報漏洩を防ぐためのオペレータの日常行動や文書保管方法などの諸々の管理が外国企業側に委ねられるのでは、依頼側である日本企業の責任が果たせないのが問題なのだ。
 では、他社にアウトソーシングせずに全ての個人情報に関わる情報インプットなどの作業を自社内でやっていれば安全だろうか? 答えがNo!であることは種々の事故でご存知の通りだ。正社員と契約社員に関わらず不心得者による漏洩事件は引きも切らない。
 ところが、アウトソーシングするか否かに関わらず、この問題をIT技術で一気に根っこのところから解決した賢い日本のベンチャーがいる。その知恵に感心してしまったのでここでご紹介したい。
 仕組みから説明すると、膨大な紙媒体の文書をスキャナーで読み取ったあと、データーをそのまま外国サイドに送るのではなく、このデーターを木っ端微塵に分解してからアウトソーサーに送付するのだ。
 保険の契約書を例に取ると、アウトソーサーの某オペレータには契約書データーの中から契約者の生年月日のたとえば生年だけしか配信されない。契約者が私 なら1943だけだ。だから、このオペレータは日がな一日、1975、1963、1981……とキーボードで打ち続けている。隣のオペレータは契約者が男 に○をしてあれば1、女に○なら2と、1か2しか打たない。その隣では、西岡、山本、田中と姓だけを打っている。だから、これではたとえ悪意があっても、 人に売れるような個人情報にはならない。アウトソーサーの社長といえども同じことで、アウトソーサーに渡ったときには個人情報は完全に細切れになってし まっていて原型を留めない仕組みなのだ。
 こうしてバラバラにデーター入力を終えて返送されてくるデジタル化された細切れ情報を日本のクライアントサイドで元の完全な契約者台帳に自動的に組み上 げられるのだ。データーの送信から完成までの所要時間が2分弱というこの処理には高度のIT技術がフル活用されている。スキャナー・システムも日本の企業 側に設置するので、この企業の一部の担当者以外には誰も個人情報に接することが出来ないという仕組みである。すでに、数十の市町村で使い始めているとい う。なかなか行動の早い市町村もあるのだなーと感心した。
 用心のためにデーター入力をすべて社内でやっている組織も多いが、このシステムを導入しておけば、一人の責任者以外は社員といえども細切れ情報にしか接することが出来なくなる。しかも膨大な人員削減が可能になるのだ。このIT活用の知恵は如何?

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