2008年9月17日水曜日

モバイル文化研究会

この度、私が呼び掛け人になってモバイル文化研究会を立ち上げた。会の趣旨は携帯電話を中心とするモバイル文化のグランドデザインを作るための研究をしようと言うものである。

携帯電話はすでに無くてはならない道具になっている。電話、メールはもとよりインターネットへのアクセスはPCからよりも携帯電話からの方が急速に普及している。当初はあんな小さな画面では面白くないと信じられていたのに、ワンセグでTVが見られるようになり、漫画や動画までもが携帯電話で楽しまれている。しかし、電車の改札や飛行機への予約からチェックインまでが携帯電話一つでOKというような社会になると、この後どうなるの? 社会的な抵抗力や判断力が未発達な子供たちに、有害な情報やサービスがいとも簡単に忍び寄るのを保護者は認識も出来ない状態を社会は放置していていいのだろうか?
という懸念がどんどん顕在化している。一体、子供たちは有害と思しきサイトにどの程度アクセスしているのだろう? どんな危険が待ち受けているのか?

この他にも、携帯電話にまつわる頭痛の種は尽きない。先日も、電車の優先座席に掛けていたら隣の中年の婦人が携帯でメールをしている。窓に張ってある注意書きを指差しながら「電源は切りましょう」と声を掛けたら、「あ、済みません」と言って素直に電源を切ってくれた。良かった―! ところが、直後に次の駅から乗り込んで来た学生がドカッと腰かけて携帯電話でメールを始めたではないか。先のご婦人に注意した以上、不公平には出来ないので、同様に注意した。せざるを得ないではないか。この学生はブッとした表情で場所を変えた。良かったー! で、考えた。この調子だと次の駅でも、その次の駅でも注意し続けなければならない。その内、ブスッと刺されるかも知れないではないか。なんで自分が車掌の代理をしなければならないのだろう。参ったなー!と途中の駅で降りてしまった。これからは見て見ぬ振りの権兵衛を決め込むしかないなーと、もう諦めの心境だ。だから65歳になった現在は、優先座席から遠ざかることにしている。万一、優先座席で携帯電話による医療事故が発生したときの「優先座席では携帯電話の電源を切って頂くよう注意をし続けております」という電鉄会社の責任回避のエクスキューズの犠牲者になるのはもう御免だ。「優先座席で携帯電話の電源を切らないと本当にペースメーカに有害なのか」に関しては関係者がみんな口を閉ざしている。真実はどうなのか?

こういう問題を分析し、将来への備えをシステムとして確立するために最も重要なことは事実を知ると言うことである。特に、現状では子供たちの携帯電話からのインターネットアクセスに関しては事実を知る手掛かりが無い。「あなたはどんなサイトにアクセスしていますか?」というインタビューをしても母親経由では事実は母親自身が知らないのだから意味がない。学校で調査をすれば事実を答えないであろうし、駅前でビラを配ってインタビューをするのも手間ばかり掛って実効性が無い。その点、パソコンからのインターネットアクセスの場合は本人の了解のもとに、いわゆる視聴率調査が可能であるが、携帯電話の場合は「電気通信事業法」の第4条(秘密の保護)に:
電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。
2.「電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。
という規定があってワイヤレスキャリア各社は視聴率調査に後ろ向きである。
しかし、パソコンの視聴率調査を見れば明らかなとおり、利用者自身の了解のもとに個人としてではなく一個のデータとしてのアクセス調査は社会のコンセンサスを得ているのだ。住所がどこそこの何の誰兵衛という個人情報は調査にはそもそも必要が無い。何十万人の子供たちの内の何万人が一日に平均何十回どんなサイトにそれぞれアクセスしているかという、しかも利用者自身の了解を得た調査が社会の将来を見通すための研究には必須なのだ。

モバイル文化研究会には呼び掛けに応じて、日本コカコーラ、花王、資生堂などの広告主グループ、DeNA、ニフティ、NTTレゾナントなどのネット系、ネットレイティングやマクロミルなどの調査系に慶応大学の国領教授、一橋大の米倉教授、携帯電話を持つ子供の母親といして田澤由利さんと尾花紀子さんにご参加頂いた。すでにユーザー分科会の熱い議論が始まっている。

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